Column
コラム
2026.10.08
出張の際に支給する「出張日当(旅費手当)」は、要件を満たせば所得税が非課税となり、会社・社員の双方に節税メリットをもたらします。
しかし、実際の現場では「自社の日当額はいくらに設定すべきか」「税務調査で否認されないか」といった具体的な運用面で悩むケースが少なくありません。
そこでこの記事では、日当の適正額の決め方や他社相場の活用法、給与・実費精算との違い、税務調査で追徴課税を防ぐための記録・保存実務までを解説します。
なお、出張日当が非課税となる基本的な仕組みや税法上の定義については、以下の記事をご覧ください。
出張日当の金額を決めるとき、「1日〇〇円まで」という法律上の決まりはありません。税務署が見ているポイントは、「その出張にとって普通に必要な金額かどうか」という1点だけです。
他社の相場データと自社の出張の様子を組み合わせて、だれが見ても納得できる金額を決定しましょう。
出張日当の金額を決める際は、他社で設定されている支給水準を参考にできます。産労総合研究所の「2023年度 国内・海外出張旅費に関する調査」では、国内出張の宿泊料について、全地域一律で支給する場合の平均額が8,606円となっています。
ただし、調査結果の平均額が、そのまま自社の日当や宿泊料の基準になるわけではありません。また、日当については、2023年度調査の無料公開資料からは役職別の平均額を確認できないため、具体的な金額を設定するときは、過去の調査結果や同業・同規模の企業の支給水準なども参考にしてください。
他社の金額だけで判断せず、自社の出張実態と照らし合わせて、通常必要と認められる範囲に収まる金額を設定することがポイントです。
参考:産労総合研究所「2023年度 国内・海外出張旅費に関する調査」
相場データを参考にしたら、最後は自社の出張のリアルな状況に合わせて金額を決めます。
移動にかかる時間や現地の交通事情、立場ごとの責任や負担の重さを考えて調整しましょう。
具体的には、以下のような分け方で金額に差をつけるのが自然です。
| 分け方 | 考えるポイント | 具体的な設定例 |
| 役職で分ける | 立場が上になるほど交際費などの負担が増える | 社員よりも役員の日当を高くする |
| 出張のタイプで分ける | 泊まりの出張は日帰りより雑費がかかる | 日帰りよりも泊まりの日当を高くする |
無理に高すぎる金額を設定するのはやめて、実際の仕事内容にぴったり合う金額を社内ルールに落とし込みます。

出張のときにかかるお金の払い方には、「給料として払う」「実費で精算する」「定額の日当を払う」の3つの方法があります。
それぞれの違いや得するポイントを知っておくと、自分の会社に一番合う払い方を選べます。
給料と日当のいちばんの違いは、「働いた分の手当て」か「自分で払ったお金の穴埋め」かという点です。ここが違うため、税金や手取りの額が変わってきます。
給料は働いた対価として支払うため、もらった金額全体に税金がかかります。一方で、正しいルールで払う出張日当は「出張で使ったお金を会社が払い戻す(実費弁償)」扱いになるため、税金がかかりません。
会社と社員にとっての違いは以下のとおりです。
無駄な税金を出さずに社員に還元するなら、給料に上乗せするよりも日当として渡すほうが双方にとってお得です。
実費精算は、出張中に実際に発生した費用を領収書などで確認し、その金額を会社が精算する方法です。そして定額の日当は、出張の条件に応じてあらかじめ定めた金額を支給する方法です。
実費精算では実際の支出額に応じて精算できる一方、従業員が領収書を集めたり、経理担当者が内容を確認したりする作業が発生します。定額日当なら、細かな雑費について個別の領収書を確認する必要がなく、精算業務を簡略化できます。
たとえば、出張時の雑費について1日3,000円の日当を設定している場合、月に5回出張すれば支給額は15,000円です。実費精算であれば、5回の出張それぞれについて実際に発生した費用を確認して精算します。
このように、定額日当は出張ごとの細かな費用をまとめて処理しやすく、実費精算は実際の支出額に応じて精算できる点が特徴です。

では、税務調査に備えて確認したい3つのポイントをみていきましょう。
最初に確認すべきなのは、設定した日当の金額が社会通念上ふさわしい範囲に収まっているかという点です。
世間の相場から大きく外れた高額な日当は、節税ではなく「隠れた給料(または役員賞与)」と税務署に判定されます。
確認時は次の2点をチェックしてください。
①高すぎないか:同規模の他社データと比較して、異常に高い金額になっていないか
②役職の差が合理的か:社長・役員・一般社員の間で、仕事上の責任や負担に応じた適切な差額になっているか
役員だけに極端な高額を設定するような偏った運用は避け、だれが見ても納得できる基準に整えます。
税務調査に備えるには、実際にどのような出張をしたのか確認できる記録を残しておきましょう。旅費規程だけでは、個々の出張について日当を支給した根拠まで示せないためです。
出張報告書や旅費精算書などには、少なくとも次のような内容を記録しておくと、出張の実態を確認しやすくなります。
最後のポイントは、その移動が本当に「会社の業務に必要な出張」にあたるかどうかです。
プライベートの旅行や日々の移動と区別がついていない場合、税理士や税務署から手当の支給を否定されます。
とくに注意したいのは、以下の2つのケースです。
| ケース | 注意すべき理由と対策 |
| プライベートを伴う出張 | 出張の前後に観光や帰省を挟む場合、私用で延びた日数の日当は支給できません。 |
| 短距離の移動 | 近場への外出にまで日当を出すと、通常の移動や通勤とみなされます。社内規程で「片道〇km以上」などの明確な線引きを作ります。 |
仕事とプライベートの境界をあいまいにせず、業務に必要な範囲だけを日当の対象にすることが安全な運用のルールです。
出張日当は、社内ルールに基づいて正しく運用すれば、会社と社員の双方にコスト上の大きなメリットをもたらします。
ただし、非課税枠を活用するためには、他社の相場や自社の出張実態に合わせた「適正な金額設定」と、税務調査に耐えうる「出張報告書などの確実な記録」が欠かせません。節税効果だけを求めて不自然な設定を行うと、かえって税務リスクを高めてしまいます。
パドゲイト合同会社では、貴社の事業形態や出張の実態に合わせた旅費規程の作成サポートをはじめ、税務調査を想定した安全な運用設計のアドバイスを行っています。
「自社の日当額が適正か不安がある」「税務調査で否認されない規程を作りたい」とお考えの経営者様や経理担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。
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