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コラム
2026.07.16
出張に伴う交通費や宿泊費、日当などの「出張旅費」は、会社の経費になるだけでなく、受け取る個人側でも所得税がかからない「非課税」として扱われます。
しかし、どのような支給方法でも一律に非課税になるわけではありません。ルールから外れた支給をすると、税務上「給与」とみなされて課税対象になるリスクがあります。
この記事では、出張旅費が非課税となる理由や給与との違いについて、実務上の注意点を踏まえて解説します。
まずは、なぜ出張旅費が非課税になるのか、その理由と給与との根本的な違いを解説します。
出張旅費が非課税となる理由は、個人の利益ではなく業務に必要な支出の補填であるためです。
たとえば、取引先への訪問や営業活動のために新幹線代や宿泊費が発生した場合、その費用は本来会社が負担すべきものと考えられます。
従業員や役員が一時的に立て替えたとしても、あとから精算されるのであれば実費の返還に過ぎません。
このような実費弁償的な性質を持つ支給については、所得税の課税対象外として取り扱われます。
実際に、国税庁の「所得税法基本通達9-3(非課税とされる旅費の範囲)」でも、職務の遂行に必要な旅行に伴い支給される旅費については、通常必要と認められる範囲内であれば非課税として取り扱う考え方が示されています。
出張旅費に含まれる代表的なものとしては、交通費や宿泊費のほか、出張中に必要となった費用などです。
ただし、業務と関係のない支出まで非課税になるわけではありません。「会社の業務を遂行するために必要だったかどうか」を判断の基準としましょう。
参考:国税局 所得税法基本通達9-3(非課税とされる旅費の範囲)
出張旅費と給与の決定的な違いは、「個人の経済的な利益(儲け)に該当するかどうか」という点にあります。
給与や賞与は、労働の対価として支払われる報酬です。そのため、受け取った個人の財産が増える「経済的利益」と判断され、所得税や住民税の課税対象になります。さらに、健康保険や厚生年金などの社会保険料を計算する際の基準(標準報酬月額)にも含まれます。
一方で、適正な範囲内で支給される出張旅費は、個人の利益には該当しません。
どれだけ多額の出張旅費を受け取ったとしても、それが業務に必要な支出である限り、所得税は一切発生しない仕組みです。住民税や社会保険料の計算基礎からも除外されるため、給与のように個人の税金や社会保険料の負担が増える心配はありません。

出張旅費は原則として非課税ですが、すべての支給が無条件で認められるわけではありません。
業務との関連性が認められない場合や、支給額が社会通念上妥当とはいえない場合には、給与として課税される可能性があります。
ここでは、出張旅費が課税対象となる代表的なケースを見ていきましょう。
出張のスケジュールに私的な観光や旅行が含まれている場合、業務に関係のない部分の費用は非課税になりません。
たとえば金曜日に出張業務を終えたあと、土曜日にそのまま現地で観光して1泊延泊するようなケースです。この場合、土曜日の宿泊費や観光地への移動にかかった交通費は会社の経費にはできず、個人の負担となります。もし会社がこの費用を支払った場合は、個人への給与として扱われ、税金がかかる仕組みです。
また、出張に家族を同行させた場合も同様の扱いを受けます。家族分の宿泊費や交通費は業務に必要な支出とは認められないため、会社が負担した分は全額が課税対象です。
出張とプライベートの旅行を組み合わせる際は、業務の時間と私的な時間をはっきりと分け、費用を正確に計算して処理する必要があります。
出張日当や宿泊費であっても、金額が高すぎる場合には課税対象となる可能性があります。
出張日当は、移動中の食事代や通信費、細かな雑費などを補填する目的で支給されるものです。そのため、一般的な範囲内であれば非課税として認められています。
しかし、実費の穴埋めという範囲を大きく超える金額を支給している場合にはその限りではありません。たとえば、一般的な水準と比べて著しく高額な日当を設定していると、実質的には報酬(給与)の一部であると判断される可能性が高まります。
その場合、日当として支給した金額の全部、または一部が給与として課税されることも考えられます。出張日当を設定する際には、世間一般の相場を踏まえた金額になっているかを確認するようにしましょう。
特定の役員だけを極端に優遇し、従業員との間に不自然な格差がある場合は、税務署から認められないリスクがあります。
役職や責任の重さに合わせて、日当や宿泊費の金額に差をつけること自体は問題ありません。しかし、社長などの役員には高額な日当を設定している一方で、一般の従業員には日当を一切支給しないような規程は危険です。
このようなバランスの悪い設定をしていると、実質的に役員へボーナスを支払うための仕組みであると判断されやすくなります。役員へのボーナス(賞与)とみなされた場合は、個人に所得税がかかるだけでなく、会社側でも経費として落とせなくなるため、全体のバランスを考慮したルール作りをしましょう。

では、出張日当を非課税として処理するために押さえておきたいポイントを紹介します。
出張日当を支給する場合は、あらかじめ旅費規程を整備しておきましょう。
旅費規程とは、出張時の交通費や宿泊費、日当の金額、支給条件などを定めた社内ルールのことです。
たとえば、「日帰り出張は○円」「宿泊を伴う出張は○円」といった基準を事前に決めておくことで、支給の根拠を明確にできます。
出張のたびに個別判断をしていると、役員や従業員によって支給額に差が生じる可能性があります。
運用の公平性を確保するためにも、支給ルールは文書として残しておくことが望ましいでしょう。
なお、旅費規程のサンプルについては、以下の記事で解説しています。
前述したように、出張日当の金額は社会通念上妥当な範囲に設定する必要があります。
金額が高すぎる場合、実費弁償ではなく実質的な報酬と判断される可能性があるためです。
明確な上限額は定められていませんが、同業他社の水準や役職とのバランスを参考にすると判断しやすくなります。
金額を決める際には、社内外に説明できる基準を設けておくと安心です。
旅費規程を導入したあとも、実際に「業務のための出張が行われた事実」を客観的に説明できるように記録を残さなければなりません。
旅費規程に基づいて定額で支給する日当や宿泊費は、個別の領収書が不要となるケースが多いです。しかし、領収書がいらないからといって、何の記録も残さずに支払うことは認められません。
具体的には、「出張旅費精算書」や「出張報告書」などの書類を1回ごとに必ず作成しましょう。いつ、誰が、どこへ、何の目的で出張したのかという記録をいつでも確認できるように保管しておくことが、適切な運用を続けるためのポイントです。
出張旅費や出張日当は、事前のルール作りと正しい記録を行うことで、適切に非課税として処理できます。個人の税金や社会保険料の負担を増やすことなく、業務にかかる実費をスマートに補填できる点が大きなメリットです。
ただし、税務上のトラブルを避けるためには、世間一般の相場に合わせた妥当な金額を設定し、毎回の出張記録を正確に保存しておく必要があります。
パドゲイト合同会社では、それぞれの企業の実態に合わせた旅費規程の作成支援や、具体的な運用のアドバイスを行っています。「自社に合った適切なルールを作りたい」「税務リスクを抑えて導入したい」とお悩みの経営者や経理担当者の方は、ぜひお気軽に当社までご相談ください。
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